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2026.07.13 栄養・食事

AST/ALT比が心臓病と死亡リスクに与える影響の研究

Association of the De-Ritis (AST/ALT) ratio with coronary heart disease prevalence and all-cause mortality in U.S. adults: a national health and nutrition examination survey analysis.

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AST/ALT比が心臓病と死亡リスクに与える影響の研究:あなたの健康診断結果が示す未来とは?

心臓病、特に冠動脈性心疾患は、世界中で多くの人々の命を奪う主要な病気の一つです。そのリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることは、健康寿命を延ばす上で極めて重要となります。近年、肝機能の指標として知られるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の比率、通称「De-Ritis(デ・リティス)比」が、心臓病のリスク評価に役立つ可能性が注目されています。この比率が、単なる肝臓の健康状態だけでなく、心臓病の有病率や全死亡リスクとどのように関連しているのかを大規模な研究が明らかにしました。

今回の記事では、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた最新の研究結果を基に、AST/ALT比が私たちの心臓の健康と寿命にどのような影響を与えるのかを詳しく解説します。あなたの健康診断結果に隠された重要なメッセージを読み解き、日々の生活に役立つ情報をお届けします。

💡研究の背景:なぜAST/ALT比が注目されるのか?

冠動脈性心疾患(Coronary Heart Disease, CHD)は、心臓に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで起こる病気で、心筋梗塞や狭心症などが含まれます。世界的に見ても、主要な死亡原因の一つであり、その予防と早期発見は公衆衛生上の大きな課題です。

De-Ritis比、すなわちASTとALTの比率は、もともと肝臓病の診断や重症度評価に用いられてきました。ASTとALTは、肝臓の細胞が破壊されると血液中に漏れ出す酵素で、健康診断の肝機能検査の項目として広く知られています。しかし、ASTは肝臓だけでなく、心臓の筋肉や骨格筋にも多く存在します。そのため、この比率が肝臓以外の臓器、特に心臓の健康状態を反映している可能性が指摘されてきました。

これまで、De-Ritis比が心臓代謝リスク(心臓病や糖尿病などの生活習慣病のリスク)の評価にどの程度有用であるかについては、まだ十分に解明されていませんでした。本研究は、このDe-Ritis比が冠動脈性心疾患の有病率や、あらゆる原因による死亡(全死亡)のリスクとどのように関連しているのかを、大規模な集団で詳細に調査することを目的としています。

De-Ritis比(AST/ALT比)とは?

De-Ritis比とは、血液検査で測定されるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という2つの酵素の比率(ASTの値をALTの値で割ったもの)です。通常、健康な人の場合、ALTの値はASTよりも高いか同程度であることが多いですが、肝臓病の種類や重症度によってはこの比率が変化します。

  • AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):肝臓、心臓、骨格筋、腎臓、赤血球など様々な臓器に存在する酵素。
  • ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ):主に肝臓に多く存在する酵素。

この比率が心臓病と関連する可能性が考えられるのは、ASTが心臓にも多く存在するため、心臓の細胞に何らかの障害が起きている場合にASTの値が上昇し、結果としてDe-Ritis比が高くなることがあるからです。また、慢性的な炎症や酸化ストレスといった、心臓病のリスクを高める要因がこの比率に影響を与える可能性も示唆されています。

🔬研究の目的と方法:大規模データでリスクを解析

この研究は、De-Ritis比と冠動脈性心疾患(CHD)の有病率、そして全死亡リスクとの関連性を評価することを目的としています。

研究デザイン

本研究は、横断研究(ある時点での病気の有無とDe-Ritis比の関連を調べる)と、前向きコホート研究(参加者を長期間追跡し、De-Ritis比と将来の死亡リスクの関連を調べる)という2つの異なるデザインを組み合わせて行われました。これにより、De-Ritis比とCHDの現在の関連性だけでなく、将来的な死亡リスクとの関連性も評価することが可能になります。

データソースと対象者

研究には、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey, NHANES)のデータが利用されました。NHANESは、米国全体の健康と栄養状態を評価するために実施される大規模な調査で、様々な人口統計学的データ、身体測定値、血液検査結果などが含まれています。今回の研究では、合計8,068人の参加者がCHD有病率の分析に、8,063人が全死亡リスクの分析に含まれました。これらの参加者は、米国の一般人口を代表するように重み付け(weighted)されており、研究結果の一般化可能性を高めています。

評価項目

  • 主要な曝露(評価する要因):De-Ritis比(AST/ALT比)です。この比率は、参加者全体を低い方から高い方へ4つのグループ(四分位、Q1からQ4)に分類して分析されました。Q1が最も低いグループ、Q4が最も高いグループです。
  • アウトカム(評価する結果):
    • CHD有病率:参加者が自己申告した冠動脈性心疾患の有無。
    • 全死亡率:国民死亡インデックス(National Death Index)との連携により確認された、あらゆる原因による死亡の有無。

分析には、年齢、性別、人種、教育レベル、収入、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI(肥満度)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など、CHDや死亡リスクに影響を与える可能性のある様々な交絡因子( confounding factors)を調整した統計モデルが用いられました。これにより、De-Ritis比とアウトカムの純粋な関連性を評価することが可能になります。

📈研究の主な結果:De-Ritis比が高いとリスクも高い

この大規模な研究から、De-Ritis比が高いことが、冠動脈性心疾患(CHD)の有病率および全死亡リスクの増加と有意に関連していることが明らかになりました。

主要な結果の概要

解析の結果、De-Ritis比が最も高いグループ(Q4)の参加者は、最も低いグループ(Q1)の参加者と比較して、CHDの有病率が約5倍高く、さらに全死亡リスクも58%増加していることが判明しました。これらの関連性は、年齢、性別、生活習慣病の有無など、様々な交絡因子を統計的に調整した後も一貫して認められました。

評価項目 De-Ritis比のグループ 結果の指標 数値(95%信頼区間) P値 解釈
CHD有病率 最高四分位 (Q4) vs 最低四分位 (Q1) オッズ比 (OR) 5.01 (2.89 – 8.69) < 0.001 De-Ritis比が最も高いグループは、最も低いグループに比べてCHDの有病率が約5倍高い。
全死亡リスク 最高四分位 (Q4) vs 最低四分位 (Q1) ハザード比 (HR) 1.58 (1.12 – 2.22) 0.010 De-Ritis比が最も高いグループは、最も低いグループに比べて全死亡リスクが58%増加する。

用語解説:

  • オッズ比 (OR):ある要因(ここではDe-Ritis比が高いこと)がある場合に、病気(CHD)になるオッズが何倍になるかを示す指標です。ORが1より大きい場合、その要因があると病気になるリスクが高まることを意味します。
  • ハザード比 (HR):ある要因がある場合に、イベント(ここでは死亡)が発生するリスクが何倍になるかを示す指標です。HRが1より大きい場合、その要因があるとイベントが発生するリスクが高まることを意味します。
  • 95%信頼区間 (CI):推定された数値(ORやHR)が、95%の確率でこの範囲内にあるだろうと予測される範囲です。この範囲に1が含まれていない場合、統計的に有意な差があると判断されます。
  • P値:統計的有意性を示す指標です。P値が0.05未満であれば、観察された結果が偶然によって生じたものではない可能性が高いと判断されます。

これらの結果は、De-Ritis比の上昇が、冠動脈性心疾患の存在と、将来の死亡リスクの両方と独立して強く関連していることを示しています。つまり、肝機能検査の項目であるAST/ALT比が、心臓の健康状態や寿命を予測する上で重要な手がかりとなる可能性が示唆されたのです。

🧐研究からの考察:De-Ritis比が示す健康のサイン

今回の研究結果は、De-Ritis比(AST/ALT比)が、冠動脈性心疾患(CHD)の有病率と全死亡リスクの両方に対して、独立した強力な予測因子となりうることを明確に示しました。これは、De-Ritis比が単なる肝機能の指標にとどまらず、全身の健康状態、特に心臓血管系のリスクを評価するための「費用対効果の高いバイオマーカー」として活用できる可能性を示唆しています。

なぜDe-Ritis比が高いと心臓病や死亡リスクが高まるのでしょうか。いくつかのメカニズムが考えられます。

  1. 心臓への負担や障害の反映:ASTは肝臓だけでなく心臓の筋肉にも多く存在します。心筋梗塞や心不全など、心臓に何らかの障害やストレスがかかっている場合、心筋細胞からASTが血液中に漏れ出し、De-Ritis比が上昇する可能性があります。ALTは主に肝臓に特異的であるため、肝臓に大きな問題がないにもかかわらずASTが高い場合、心臓の問題を示唆しているかもしれません。
  2. 慢性炎症や酸化ストレス:De-Ritis比の上昇は、体内の慢性的な炎症や酸化ストレスと関連している可能性も指摘されています。これらの状態は、動脈硬化の進行を促進し、心臓病のリスクを高めることが知られています。
  3. 代謝異常の指標:De-Ritis比は、インスリン抵抗性や脂肪肝といった代謝異常と関連することが示されています。これらの代謝異常は、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった心臓病の主要なリスク因子と密接に結びついています。

この研究の強みは、米国を代表する大規模なデータセット(NHANES)を使用し、横断研究と前向きコホート研究の両方で分析を行った点です。これにより、De-Ritis比とCHDの現在の関連性だけでなく、将来の死亡リスクとの関連性も確認することができました。また、年齢、性別、生活習慣病の有無など、様々な交絡因子を調整しているため、De-Ritis比とリスクの関連性がより信頼性の高いものとなっています。

この結果は、日常の健康診断で測定されるASTとALTの値から算出されるDe-Ritis比が、心臓病のリスクを評価する上で、簡便で追加費用がかからない有用なツールとなりうることを示唆しています。特に、他のリスク因子が少ないように見える人でも、De-Ritis比が高い場合には、より注意深い経過観察や、心臓病予防のための介入が必要となるかもしれません。

🏃実生活へのアドバイス:あなたの健康を守るために

今回の研究結果を受けて、私たちは日々の生活の中でどのように健康管理に取り組むべきでしょうか。AST/ALT比は、あなたの心臓の健康状態を映し出す鏡の一つとなりえます。以下の点に注意し、健康的な生活を心がけましょう。

  • 定期的な健康診断の受診と結果の確認:
    • 毎年健康診断を受け、ASTとALTの数値を確認しましょう。これらの数値からDe-Ritis比を自分で計算することも可能です(AST ÷ ALT)。
    • もしDe-Ritis比が高い、または過去の数値と比較して上昇傾向にある場合は、医師に相談し、その意味について詳しく尋ねてみましょう。
    • 肝機能だけでなく、心臓病のリスク因子(血圧、血糖値、コレステロール値など)も総合的に確認することが重要です。
  • バランスの取れた食事:
    • 野菜、果物、全粒穀物を豊富に摂り、加工食品、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、過剰な糖分の摂取を控えましょう。
    • 魚や鶏肉などの良質なタンパク質を積極的に取り入れ、赤肉の摂取は適量に留めましょう。
    • 肝臓や心臓の健康をサポートする抗酸化物質や食物繊維を意識して摂取しましょう。
  • 適度な運動習慣:
    • 週に150分以上の中強度の有酸素運動(早歩き、ジョギング、水泳など)を目標にしましょう。
    • 筋力トレーニングも組み合わせることで、全身の代謝改善に役立ちます。
    • 座りっぱなしの時間を減らし、こまめに体を動かすことを心がけましょう。
  • 禁煙と節酒:
    • 喫煙は心臓病の最大の危険因子の一つです。禁煙は心臓病リスクを大幅に低減します。
    • 過度なアルコール摂取は肝臓だけでなく、心臓にも負担をかけます。適量を守るか、できる限り控えましょう。
  • ストレス管理と十分な睡眠:
    • 慢性的なストレスは心臓病のリスクを高める可能性があります。リラックスできる時間を作り、ストレスを上手に解消しましょう。
    • 質の良い睡眠を7~8時間確保することは、心身の健康維持に不可欠です。
  • 医師との連携:
    • もし健康診断で異常値が見つかった場合や、心臓病のリスク因子を複数持っている場合は、かかりつけ医や専門医と密に連携し、適切なアドバイスや治療を受けましょう。
    • De-Ritis比が高いからといって過度に心配する必要はありませんが、これをきっかけに生活習慣を見直す良い機会と捉えましょう。

De-Ritis比は、あなたの健康状態を早期に察知し、より良い未来へと導くためのヒントを与えてくれるかもしれません。日々の小さな心がけが、将来の大きな健康へと繋がります。

🚧研究の限界と今後の課題

本研究は大規模なデータを用いてDe-Ritis比と心臓病・死亡リスクの関連性を明らかにしたものの、いくつかの限界点も存在します。

  • 自己申告のCHDデータ:冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、参加者の自己申告に基づいています。自己申告は、診断の正確性に欠ける可能性があり、実際の有病率を過小評価または過大評価している可能性があります。
  • 横断研究の限界:CHD有病率の分析は横断研究デザインで行われているため、De-Ritis比の上昇がCHDの原因であるのか、あるいはCHDの結果としてDe-Ritis比が上昇しているのかという因果関係を明確に特定することはできません。
  • NHANESデータの特性:NHANESは米国の一般人口を代表するデータですが、特定の集団(例:非常に稀な疾患を持つ人々)については十分な情報が得られない場合があります。また、データ収集時点での情報に限られるため、長期的な生活習慣の変化などが考慮しきれない可能性もあります。
  • 未測定の交絡因子:本研究では多くの交絡因子を調整していますが、De-Ritis比と心臓病・死亡リスクの関連に影響を与える可能性のある、他の未測定の因子が存在する可能性は否定できません。

これらの限界を踏まえ、今後の研究では、より客観的なCHD診断データを用いた研究や、De-Ritis比の上昇が心臓病を引き起こすメカニズムを詳細に解明する基礎研究、そしてDe-Ritis比を指標とした介入研究などが求められます。例えば、De-Ritis比が高い集団に対して生活習慣改善プログラムを実施し、その後の心臓病発症率や死亡率の変化を追跡する研究などが考えられます。

🌟まとめ

今回の研究は、AST/ALT比(De-Ritis比)の上昇が、冠動脈性心疾患(CHD)の有病率増加と、あらゆる原因による死亡リスクの増加に、独立して強く関連していることを明らかにしました。これは、健康診断で測定される肝機能の指標が、心臓の健康状態や将来の寿命を予測するための、簡便かつ費用対効果の高いバイオマーカーとして活用できる可能性を示唆しています。

De-Ritis比が高いと指摘された場合は、過度に心配するのではなく、これを自身の健康状態を見直す良い機会と捉えましょう。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理、十分な睡眠といった健康的な生活習慣を心がけることが、心臓病予防と健康寿命の延伸に繋がります。定期的な健康診断を受け、自身の体のサインに耳を傾け、必要に応じて医師と相談しながら、積極的に健康管理に取り組んでいきましょう。

🔗関連リンク集

  • 厚生労働省
  • 日本循環器学会
  • 国立循環器病研究センター
  • 日本肝臓学会
  • National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES) – CDC

書誌情報

DOI 10.1186/s13019-026-04499-7
PMID 42437929
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42437929/
発行年 2026
著者名 Zhang Hongguang, Feng Shuo
著者所属 Department of Cardiology, the First Hospital of China Medical University, No.155 Nanjing North Street, Heping District, Liaoning Province, 110001, Shenyang, China.; Department of Cardiology, the First Hospital of China Medical University, No.155 Nanjing North Street, Heping District, Liaoning Province, 110001, Shenyang, China. shuo_feng1993@163.com.
雑誌名 J Cardiothorac Surg

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PMID 40964686
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40964686/
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PMID 41337743
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41337743/
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著者名 Wornom Christina, Brekke-Kumley Brooklyn, Luthra Tavsimran, Smith Lynn J, Harrington Jane C
雑誌名 JMIR formative research
  • がん・腫瘍学
  • メンタルヘルス
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