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2026.06.17 栄養・食事

内服や塗り薬のステロイド使用量と2型糖尿病の関連を研究

Dose-Response Association Between Systemic and Dermatologic Glucocorticoid Use and Type 2 Diabetes Mellitus: A Nationwide Case-Control Study.

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ステロイド薬は、アレルギー、ぜんそく、自己免疫疾患、皮膚炎など、さまざまな病気の治療に欠かせない重要な薬です。その強力な抗炎症作用や免疫抑制作用により、多くの患者さんの症状を改善し、生活の質を高めています。しかし、その一方で、長期使用や高用量使用による副作用も知られており、特に血糖値への影響や糖尿病リスクは重要な課題とされてきました。これまでの研究では、主に内服の全身性ステロイドと2型糖尿病の関連が指摘されてきましたが、塗り薬などの局所ステロイドがどの程度影響するのか、また低用量でのリスクはどうなのかについては、まだ十分に解明されていませんでした。今回ご紹介する研究は、デンマークの大規模な国民健康データを用いて、内服薬だけでなく塗り薬を含む様々なステロイドの使用量と2型糖尿病の発症リスクとの関連を詳細に調査したものです。

💊ステロイド薬と2型糖尿病:知っておきたい最新の研究結果

研究の背景と目的

ステロイド薬は、その強力な効果から、医療現場で広く使われている薬です。炎症を抑えたり、免疫の働きを調整したりすることで、多くの病気の治療に貢献しています。しかし、その効果の裏側には、血糖値の上昇や骨粗しょう症、感染症のリスク増加など、様々な副作用が伴うことも知られています。特に、2型糖尿病の発症リスクを高める可能性については、以前から懸念されてきました。

これまでの研究では、主に内服のステロイド薬が糖尿病リスクを高めることが示されてきましたが、皮膚に塗るステロイド(外用ステロイド)や、鼻、目、耳などに使う局所ステロイドが、どの程度2型糖尿病の発症に影響するのかは、まだはっきりしていませんでした。また、ごく少量(低用量)のステロイド使用であっても、糖尿病リスクに影響があるのかについても、さらなる検証が求められていました。

本研究は、これらの疑問に答えるため、デンマークの広範な国民健康データを利用して、内服薬と様々な種類の局所ステロイドの使用量と、2型糖尿病の発症リスクとの関連を、大規模かつ詳細に調査することを目的としました。これにより、ステロイド薬のより安全な使用方法や、患者さんのモニタリング(経過観察)のあり方について、新たな知見を提供することが期待されました。

研究の方法:デンマークの大規模データで検証

この研究は、デンマークの国民健康レジストリデータ(国民の医療記録をまとめたデータベース)を用いた、全国規模のケースコントロール研究(症例対照研究)として実施されました。ケースコントロール研究とは、ある病気にかかった人(症例)と、かかっていない人(対照)を比較し、過去の要因(今回の場合はステロイド使用)を調べることで、病気と要因の関連性を探る研究手法です。

研究対象者とデータ期間

  • データ期間: 2013年から2021年までのデンマークのレジストリデータを使用しました。
  • 症例(2型糖尿病新規発症者): 40歳以上の2型糖尿病を新たに発症した患者さん149,113人が対象となりました。
  • 対照者: 症例の患者さん1人に対して、年齢、性別、およびCharlson Comorbidity Index(チャールソン併存疾患指数)(複数の病気を抱えている度合いを示す指標)が一致するように選ばれた3人の健康な人、合計447,339人が対照者として選ばれました。

ステロイド曝露の定義

ステロイドの使用状況は、2型糖尿病の診断日(または対照者ではそのマッチング日)の1年前までに1回以上、かつ3年以内に2回以上の処方がある場合に「ステロイド曝露あり」と定義されました。ステロイドは以下の種類に分類されました。

  • 全身性ステロイド: 主に内服薬など、全身に作用するタイプ。
  • 局所ステロイド: 特定の部位に作用するタイプで、さらに以下の種類に分けられました。
    • 皮膚用ステロイド(塗り薬)
    • 鼻用ステロイド
    • 直腸用ステロイド
    • 眼用ステロイド(目薬)
    • 耳用ステロイド(点耳薬)

用量反応関係の評価

ステロイドの使用量と2型糖尿病発症リスクの関連を評価するため、1日あたりのプレドニゾロン換算量が用いられました。プレドニゾロン換算量とは、様々な種類のステロイド薬の効果を、一般的なステロイド薬であるプレドニゾロンの量に換算して比較するための指標です。これにより、異なるステロイド薬であっても、その効果の強さに応じた用量で比較することが可能になります。

統計解析

統計解析には、条件付きロジスティック回帰分析が用いられ、ステロイド使用と2型糖尿病発症リスクの関連がオッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)で示されました。オッズ比が1より大きい場合、その要因(ステロイド使用)があると病気(2型糖尿病)になるリスクが高いことを示します。また、年齢、性別、併存疾患指数などの影響を調整した上で、純粋なステロイドの影響を評価しました。

📊研究の主なポイント:内服・塗り薬ステロイドと2型糖尿病リスク

この大規模な研究の結果、2型糖尿病を新たに発症した患者さんたちは、健康な対照者に比べて、内服の全身性ステロイドと皮膚用ステロイドの使用量および累積使用量が多いことが明らかになりました。特に、ステロイドの使用量が増えるにつれて、2型糖尿病の発症リスクが段階的に上昇するという、明確な用量依存性の関連が示されました。

以下に、主要な結果をまとめた表を示します。

ステロイド使用量と2型糖尿病発症リスク(調整済みオッズ比)
ステロイドの種類 1日あたりのプレドニゾロン換算量 調整済みオッズ比 (95%信頼区間)
内服全身性ステロイド 2.5 mg/日 未満(低用量) 1.25 (1.21-1.29)
2.5 mg/日 ~ 7.4 mg/日(中用量) 1.49 (1.43-1.56)
7.5 mg/日 以上(高用量) 3.02 (2.90-3.15)
皮膚用ステロイド 2.5 mg/日 未満(低用量) 1.21 (1.18-1.23)
7.5 mg/日 以上(高用量) 1.51 (1.40-1.63)

この表からわかるように、

  • 内服全身性ステロイド: ごく少量(1日あたり2.5mg未満)の使用であっても、2型糖尿病の発症リスクが1.25倍に上昇しました。使用量が増えるにつれてリスクはさらに高まり、1日あたり7.5mg以上では、リスクが3倍以上になることが示されました。これは、内服ステロイドが血糖値に与える影響が非常に大きいことを裏付ける結果です。
  • 皮膚用ステロイド: 内服ステロイドほどではないものの、皮膚用ステロイドも用量依存的に2型糖尿病のリスクを上昇させることが示されました。低用量(1日あたり2.5mg未満)で1.21倍、高用量(1日あたり7.5mg以上)では1.51倍のリスク上昇が見られました。これは、皮膚から吸収されたステロイドが全身に影響を及ぼし、代謝に影響を与える可能性を示唆しています。
  • その他の局所ステロイド: 鼻、直腸、眼、耳に用いるステロイドについては、年齢や併存疾患などの要因を調整した後では、2型糖尿病との明確な用量依存的な関連は観察されませんでした。これは、これらの部位からのステロイドの全身への吸収が比較的少ないため、代謝への影響が小さいと考えられます。

🧐研究結果からわかること:なぜステロイドは糖尿病リスクを高めるのか?

今回の研究は、内服の全身性ステロイドだけでなく、皮膚に塗るステロイドも、低用量から2型糖尿病の発症リスクを用量依存的に高めることを明確に示しました。この結果は、ステロイド治療を受けている多くの患者さんにとって重要な意味を持ちます。

ステロイドが血糖値を上昇させるメカニズム

ステロイド薬が血糖値を上昇させ、糖尿病リスクを高める主なメカニズムは以下の通りです。

  • インスリン抵抗性の増加: ステロイドは、体内の細胞がインスリンというホルモンに反応しにくくする作用(インスリン抵抗性)を高めます。インスリンは血糖値を下げる働きがあるため、インスリン抵抗性が高まると、血糖値が下がりづらくなります。
  • 肝臓での糖新生促進: ステロイドは、肝臓がブドウ糖を新たに作り出す働き(糖新生)を促進します。これにより、血液中のブドウ糖が増加し、血糖値が上昇します。
  • 膵臓のインスリン分泌能力への影響: 長期的にステロイドを使用すると、膵臓のインスリンを分泌する細胞(β細胞)に負担がかかり、インスリンの分泌能力が低下する可能性も指摘されています。

皮膚用ステロイドの影響

皮膚用ステロイドは、通常、内服薬に比べて全身への吸収が少ないと考えられています。しかし、広範囲にわたる使用、長期にわたる使用、皮膚のバリア機能が低下している状態(湿疹やアトピー性皮膚炎が重度の場合など)での使用、あるいは強力なステロイド剤の使用などでは、皮膚から吸収されて全身に影響を及ぼす可能性があります。今回の研究結果は、皮膚用ステロイドであっても、その累積使用量によっては、代謝に影響を与え、2型糖尿病のリスクを高める可能性があることを示唆しています。

一方で、鼻、直腸、眼、耳に用いるステロイドは、全身への吸収がさらに限定的であるため、代謝への影響が小さいと考えられます。このことは、これらの局所ステロイドが、比較的「代謝的に安全」である可能性を示しています。

💡実生活でのアドバイス:ステロイドを使う際の注意点

今回の研究結果は、ステロイド薬の安全性に関する重要な情報を提供していますが、ステロイドは多くの病気にとって非常に有効な治療薬であることに変わりはありません。重要なのは、そのリスクを理解し、適切に使用することです。

  • 自己判断での中止は避ける: ステロイド薬は、医師の指示なしに急に中止すると、病状の悪化や離脱症状(倦怠感、吐き気、血圧低下など)を引き起こす可能性があります。必ず医師や薬剤師の指示に従い、適切な用量と期間で使用してください。
  • 医師・薬剤師との密な連携: ステロイド治療を受ける際は、自身の既往歴(特に糖尿病やその家族歴)、現在の健康状態、他の服用薬などを医師や薬剤師に正確に伝えてください。疑問や不安があれば、遠慮なく相談しましょう。
  • 血糖値のモニタリング: 特に内服の全身性ステロイドや、広範囲・長期にわたる皮膚用ステロイドを使用する場合は、定期的に血糖値を測定するなど、医師の指示に従ってモニタリングを行うことが重要です。糖尿病の既往がある方や、糖尿病のリスクが高い方(肥満、家族歴など)は、より一層の注意が必要です。
  • 健康的な生活習慣: バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることは、ステロイド使用による血糖値上昇のリスクを軽減し、糖尿病予防にもつながります。
  • 皮膚用ステロイドの適切な使用: 塗り薬のステロイドも、医師の指示された量と範囲を守って使用しましょう。必要以上に広範囲に塗ったり、長期間使用したりすることは避け、症状が改善したら速やかに医師に相談してください。
  • 他の局所ステロイドの安全性: 鼻、直腸、眼、耳に用いるステロイドは、代謝への影響が少ないとされていますが、それでも指示された用量・用法を守ることが大切です。

⚠️研究の限界と今後の課題

本研究は大規模なデータを用いた貴重な知見を提供しましたが、いくつかの限界も存在します。

  • 観察研究であること: この研究は、過去のデータから関連性を探る観察研究であり、ステロイド使用が直接的に2型糖尿病を引き起こすという因果関係を証明するものではありません。ステロイドを使用する患者さんは、もともと糖尿病を発症しやすい他の要因(例えば、基礎疾患の重症度や生活習慣など)を抱えている可能性も考慮する必要があります。
  • 未測定の交絡因子: 研究では年齢や併存疾患などの要因を調整していますが、食事内容、運動習慣、喫煙、飲酒といった生活習慣因子など、2型糖尿病の発症に影響を与える可能性のある全ての要因を調整することは困難です。これらの未測定の要因が結果に影響を与えている可能性も否定できません。
  • ステロイド使用の詳細: レジストリデータでは、ステロイドの処方記録は得られますが、実際に患者さんがどの程度指示通りに使用したか、使用の中断期間、具体的な塗布面積や回数といった、より詳細な使用状況までは把握できません。
  • 人種・地域による違い: 本研究はデンマークの住民を対象としたものであり、人種や生活習慣、医療システムが異なる他の国や地域の人々に、そのまま結果が当てはまるかはさらなる検証が必要です。
  • ステロイドの種類による詳細な違い: プレドニゾロン換算量で評価しているため、個々のステロイドの種類による代謝への影響の微妙な違いまでは考慮しきれていない可能性があります。

これらの限界を踏まえ、今後は、より詳細なステロイドの使用状況を把握できる研究や、異なる集団での検証、さらにはステロイド使用と糖尿病発症のメカニズムをより深く解明するための研究が期待されます。

まとめ

今回のデンマークの大規模な研究は、内服の全身性ステロイドだけでなく、皮膚に塗るステロイドも、低用量から2型糖尿病の発症リスクを用量依存的に高めることを明らかにしました。特に内服ステロイドでは、用量が増えるほどリスクが顕著に上昇し、皮膚用ステロイドでも同様の傾向が確認されました。一方で、鼻、直腸、眼、耳に用いる局所ステロイドは、代謝への影響が少ない可能性が示唆されました。

この知見は、ステロイド治療を受けている患者さんや医療従事者にとって非常に重要です。ステロイドは多くの病気にとって不可欠な薬ですが、その使用に際しては、2型糖尿病のリスクを十分に考慮し、医師と患者さんが協力して、適切なモニタリングと管理を行うことが求められます。特に、内服や広範囲・長期にわたる皮膚用ステロイドを使用する場合は、血糖値の推移に注意を払い、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

関連リンク集

  • 日本糖尿病学会
  • 日本内分泌学会
  • 厚生労働省
  • 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
  • 国立健康・栄養研究所 – 糖尿病に関する情報

書誌情報

DOI 10.1111/dom.71001
PMID 42304194
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42304194/
発行年 2026
著者名 Vadsholt David, Kvist Annika V, Sandiramoorthy Chano, Lewis Joshua R, Vestergaard Peter, Røikjer Johan, Rasmussen Nicklas H
著者所属 Steno Diabetes Center North Denmark, Aalborg University Hospital, Aalborg, Denmark.; Department of Clinical Medicine, Aalborg University, Aalborg, Denmark.; Nutrition & Health Innovation Research Institute, Edith Cowan University, Perth, Australia.
雑誌名 Diabetes Obes Metab

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DOI 10.1007/s10157-025-02767-9
PMID 40963033
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40963033/
発行年 2026
著者名 Tabata Aki, Yabe Hiroki, Katogi Takehide, Mitake Yuya, Oono Shunta, Yamaguchi Tomoya, Fujii Takayuki
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DOI 10.1186/s43897-025-00173-z
PMID 40903764
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40903764/
発行年 2025
著者名 Wang Yarong, Xia Bin, Lin Qiong, Wang Huan, Wu Zhiyong, Zhang Haiqing, Zhou Zhe, Yan Zhenli, Gao Qiming, Zhang Xiangzhan, Wang Suke, Liu Zhenzhen, Meng Xiangpeng, Zhang Yaru, Gleave Andrew P, Zhang Hengtao, Yao Jia-Long
雑誌名 Molecular horticulture
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DOI 10.1002/prot.70130
PMID 41813604
PubMed URL https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41813604/
発行年 2026
著者名 Mandal Ronit, Malvar Sara, Chandra Ranveer, Ismail Baraem P
雑誌名 Proteins
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